たいへき 第3話 3種 雰囲気を作りまわりを巻き込む

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第3話 3種 <クラスのアイドルタイプ・外向き>
〜情動、客観的な観測もコントロールもできないのが前提〜
〜情動ベース、集団と個別の話〜

ちま「幼稚園のママ友に印象的な人がいたので話すね。
子どもの同級生のママなんだけど、
子どもに何か聞かれて、「いいよー」と言ったらしいのね。
そうしたら、「ママの『いい』は本当に『いい』なの?」と
聞き返されたらしいんだよ。幼稚園児によ?
ママに怯えてるとかではなくて、むしろ親子仲は良いくらいなほどみたいだけど、いつも一貫性のない対応をしていることがこのエピソードでわかるよね」

主人「そうだね。その話は子ども経由で聞いたの?それともママ本人から聞いたの?」

ちま「ママ本人からだね。
あっけらかーんとして、『ママがいいって言ってるじゃーん!』ってうざそうに答えたって言ってたよ」

主人「うわーすごいね。屈託ない。
情動が先行してるタイプだね。
いくらリラックスしていてもなかなか他人にできる話ではないよ」

ちま「子どもが本当に『いい』なの?って聞くってことは、今までに幾度となく覆されたことがある、ってことでしょ。
そんなの大人なのにあり得なくない?
私ならとても他の人に話せないよ」

主人「いや、情動が優先するタイプならありうるかな。
感情がバーッと湧いて出て、すーっと消えるので、もうそのママの中では終わっている話ということになる。
むかし話みたいなものだね。
こういうことがあったんだよって屈託なく話せる。
たいへき的には3種。情動ベースの発火ということになる。
3種性のポイントは、重要性ある対象、つまりその時点での「好き」に一直線ってことだ。それも思考に先んじてな」

ちま「そんなたいへきもあるんだ。
ちょっと理解できないな」

主人「そんなことはないよ。
幼稚園〜小学生はどの子も3種性を帯びている。
一時的にブワーッとなって、すーっと消える。そしてよく覚えていない。みたいな感情。
そういうの、君も自分の子どもに感じたことはないかな?」

ちま「そうだね……
次女がね。パーッと来て『おねえちゃんがなんたらー!!』と言ってパーッといなくなる。
それで、その時のことを聞くと詳しい話ができなかったりして、あまり覚えていないようなんだけど、これも3種性かな?」

主人「まさしく。レスポンシブルだね」

ちま「そのママもうちの子どももそういう時って陽にあたった花みたいな明るさがあるんだけど、3種あるあるなの?」

主人「あるだろうね。
花のような……というか、ポンと『咲く』という感じかな?それならすごくよくわかるよ。女性的な感じだね」

ちま「すぐ忘れるのも?」

主人「そうだね、すぐ咲いてすぐ枯れる。表裏一体だね」

ちま「www」

主人「情動の性質の話は大事な話だけど、ややこしいので、詳しくは別の機会でするけど、今はさわりの部分だけ。
脳とか認知の話が関わってくる。未知と予測がキーワードになるんだけど、要は脳は全ての情報を処理しきれないから、省略をベースにした脳内処理をするんだ。生きるか死ぬか、瞬間の判断をそれで乗り越えて生き残ってきたのが、今の人類さ。
まあ今のロジック重視の世の中だと、良さとか強さとかがわかりにくい部分もあるけど……
実際は軽視できない。
ロジックより早いってのもあるし、それは本能的なヒト認知に根ざした速さだから、それを突き詰めていくことで他の人にもメリットがある。
3種は未知の要素相手だと本当に強い。というか頼もしく見える。
なにしろ逡巡しないで決定できるんだからね」

ちま「なんだかすごいなあ」

主人「未知を前にして『すくむことが少ない』『他の人が動けないところでも動ける』
そういう行為、あり方というのはカリスマになる素質であるともいえる。同程度の能力なら、決断の早さは周りを引っ張る影響力を示す要素になりやすい」

ちま「なんかすごいじゃん」

主人「実際すごくはある。でも、現代社会だと日常でカリスマになる機会や、まったくの未知なんてほとんど意識されないものだ。
どちらかというと、瞬間湯沸かし器の3種は成長とともに抑圧されて隠れて生きることが多いかもね」

ちま「なんだか残念な話に……」

主人「いや、言い方は悪いけど、高レベルの感覚を持つ3種は高性能なカナリアみたいなものなんだ。昔、炭鉱で毒ガス検知器として使われたようにね。
ただ本人の気の向くまま鉄砲玉にするのでは惜しいんだよ」

ちま「どういうこと?」

主人「個体レベルと共同体レベルで必要な発火、発火の価値は温度差があるんだ。それが3種性の必要性や価値については特に顕著ということさ。
『すくむことなく飛び出す』というのは当然、毎回上手くいくとは限らない、リスクのある行動だ。なぜなら基本、熟考する前に行動することになるからね。
これは個体レベル、すなわち3種の人個人にとって見れば、明らかな利益とは言い難いのはわかるだろう?

ちま「それはそうね。義務感などからではなくて、3種的な価値観で突き進むのは、リスクを取ることの裏返しになるのか」

主人「そう。共同体レベルで見れば、そういう3種の人がいるからこそ、次の手に進めるということになる。3種の人が成功しても失敗してもね。だから3種性が欠落してしまった共同体は、茹でガエルのように全滅してしまうリスクが高くなるとも言える。だれもリスクを取っていかなくなるわけだから。

3種性の特徴は
『雰囲気をつくる』『空気感を醸し出す』
『思考に先行して、考える前に動く』
といったところだね。

リスクを取るとは言え、現代なら、なにも生命をかけるまでしなくて良いんだ。新企画や新規開発などでは大いに強みになるだろう。

逆に、定常的な業務や安定した組織、バックオフィスや単調な管理業務などでは異分子そのものになってしまうかもしれない。組織の求める新規性と3種性では、質も程度も食い違う懸念が強いからね。そういった状況において、多数派にとっては振り回される印象にしか見えないことも多いだろうね」

ちま「そうなんだ」

主人「ここで3種の注意事項だ。
何かあった時、長いこと臨場感をもってはくれないので、3種性を持つ人になにかを正したい時には注意を要するんだ。説教くさいと思われたらまず耳に入らないし、「わかりました」って言わせたところで、「わかってない」ことが多い。第一印象で反発が発火すると、聞く耳を持ってくれないと考えるくらいで丁度いい」

ちま「そんなの。どうすればいいの?」

主人「一番いいのは、その場を押さえること。さすがに現場を押さえて指摘すれば反論しにくいし、そうした打てば響く的なやりとりは3種性の望むところでもあるわけではある。たとえ不快なものであったとしても、後出しされるよりはマシという感覚だね」

ちま「まじか。じゃあタイミング外したらもう無理?」

主人「そんな時は、3種の人にとって、いつもと違う環境を用意するとうまくいく可能性が高まる。
たとえば、いつもと違う人を入れて話すとか、いつもと違う場所で伝えるとか、まさに本来の『気分転換』だね。
それでいてしつこすぎず、指摘して目的を達したら空気を戻してサーッと解散するのがいいだろうね」

ちま「そこまで必要なのか。面倒だね」

主人「3種性の重要性観点を高いものから並べると……

憧れさせる。重要度を高める。納得させる。約束レベルに落とす。あとは社会性との相談。といった順かな。

いわば『まず私の感情を納得させてよ』ということなんだ。約束しても、理屈で納得しても、憧れや好意というベースがなければ盤石ではないし、そもそもその場の感覚が最優先。それが3種の人の重視する自然体という感覚なんだよ。

自然に抱く印象面に沿うことを重視するという性質上、属人的な判断をこえるインスピレーションがどうしても必要になってくる。属人的な判断というのは、社会性動物であるヒトにとってきわめて重要度が高い、印象の総合評価だからね。社会性動物の敵味方識別のあたりが3種性のルーツだと考えれば、まあ理解はできるんじゃないかな。とくに妊娠のダウンサイドが大きい女性にとっての男性評価の根幹だと思う」

ちま「あー。わかる」

主人「3種であろうがなかろうが、自然体を恣意的に変えることは難しいものだ。で、3種性というのは自意識や感覚を先行させるという特性な訳だ。

そのような人が何かやらかしをしたとき、3種性を発火した結果、その人にとっての齟齬や落ち度の臨場感が自覚されなければ、これは相手の重要性をこちらの演出や努力で補う必要が出てくるというわけさ。

子どもをあやすように対応するか、社会性の原則を提示して突き放すか、その辺のさじ加減は時と場合の人それぞれだね。基本的にたいへきというのは根源的欲求だから、自分の感覚を他者にも向けることが多い。理屈っぽいたいへきは相手の理屈っぽさを評価するようにね。これは理屈の内容そのものに同意しなくても、枠組みを共有するということに関する評価だ」

ちま「理屈っぽいたいへき…… きみのことか」

主人「(無視して)だけど3種性は気分や感覚といった、思考に先行する領域の根源欲求といえる。そうすると枠組みの共通性というより、同族嫌悪が先に出ることが多くなってしまいがちだ。3種性同士のぶつかりあいというのは、お互い情熱的で一気に盛り上がって、情動面で衝突するって感じが典型的だと思う」

ちま「それすごくわかる。まさに女心って感じ」

主人「だから対処指針として覚えておくと、便利だね。
あと注意したいのが、操作的、作為的だったりすると、その人が思考ベースで頭良くなった時、作為に気づかれるので、注意がいる。
本当はその人が頭良くなる過程でこちらの気配りをわかってくれると丸くおさまるんだけどね。働きかけする上で、後で転がされてることに気づいてからも得心できる節度や上品さが大事だ」

ちま「それは単なるデリカシーとは違う処世術かもね。成長したからこそわかるありがたみなわけか」

主人「ああそう。大事な点として、たいへきの種別と頭の良さは別物だよ。この際、通念的な『頭の良さ』のイメージはいったん捨て去ってしまった方が良い。ヒトという生物が持つ脳内処理の方向性は外部の評価系とは別に幾つもある。たいへきの説明の流れでいうなら、たいへきの特性が環境によって強みや弱みになるだけなんだ」

ちま「次女の8種性の内向きねじれのようなものか」

主人「そう。それと同じだ。たとえば3種性があまりに感覚ベースで理屈面がガバガバに見えても、そんなのは必要に応じてすぐに乗り越えることも少なくない。むしろ持ち前の直感力でスピード成長する人がかなりいる。本人の気分や好き嫌いがモロに反映することが多いから、学習能力にはムラがあるけれど、決して低いというわけではないから注意が必要だよ」

ちま「まあ、それはそうか。思考は道具みたいなものだし、習熟もするよね」

主人「三日会わざれば、刮目して見る必要があるといえるだろうね。言葉による思考を積み重ねる型の人にとっては理解しにくいと思うけど、感覚先行ゆえに思考の瞬発力と直観力が異次元なのだから、油断すると足元をすくわれてしまうこともある。3種性が少数派扱いでそうした個性を伸ばす受け皿が少ないのは残念なことだし、間違いなくこれからの大きな課題のひとつだと思うよ」

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